窒息死の美しさ
指先で輪郭を辿り、左目を隠す髪に触れる。呆けたように細まる瞼に口づけて、掌で身体を弄った。熱を灯していく体内に誘われながら、耳に舌を這わすと、片手で腰を支えられて、ゆっくりと服が脱がされていく。胸元が露わになる前にその手を制し、唇を重ねた。熱い舌が、口内を犯していく。「ウタカタ様、顔が赤いですよ」
「お前のせいだろう」
太ももをウタカタ様の腰に絡みつかせて、肩に手を置きながら背筋を伸ばした。普段は見上げている顔が、今は余裕のない表情で私を見上げている。それが愉しくて、焦らすように唇を指で辿った。
指先にかかる吐息が、なまめかしい熱を体の奥に届けていく。もう1度深く口付けて、肩に置いていた手をウタカタ様の首に回した。がっしりとした首から、ウタカタ様の脈が伝わってくる。
「なんだ、オレを殺す気か?」
「まさか。ウタカタ様が死んだら、私は生きていけません」
口にする言葉とは反対に、首を包む指先に力を込めた。早まっていく脈拍と、惹かれるほど暖かい感触に、自然と吐息が漏れていく。
「ホタルに殺されるなら、それはそれでいいかもな」
緩やかに後ろに倒れながら、ウタカタ様が妖しく微笑んだ。頬にかかった私の髪に口付けたあと、首に回す指を辿って、私の首へと手を回す。心地良い窒息感に、ウタカタ様を締めていた手の力が緩んだ。それを見透かしていたかのように、ウタカタ様は私の頭を押さえて唇を重ね、息を継ぐ暇もないまま、口内を玩ぶように舌を動かしていく。
舌を舐める感触に腕の力が抜けていき、ウタカタ様の頭を抱え込むようにして身体を預けた。片手で掴まれたままの首が、息苦しさを悦ぶように熱を持っていく。
「どうせ窒息するなら、唇を塞いだほうがいいと思わないか?」
「はっ……あ、……」
「まあ、オレがホタルを殺すなんて、ありえないけどな」
首から手が離されて、酸素が咽奥へと一気に吸い込まれていく。その冷たさに喘いでいる間に、肩にかかっていた着物が矢庭に脱がされていった。満足気に弧を描く瞳に、先までとは立場が逆転していることを察して逃げようと浮かした腰を、ウタカタ様の手がしっかりと押さえる。
「焦らされているのはどちらだろうな」
「ウタカタ様の、いじわる」
「仕掛けたのはお前だろう」
組み敷かれたまま私を抱くウタカタ様に、体内の熱がじわりと溶けていった。ウタカタ様に与えられる息苦しさは、どんな快感よりも私を昇りつめさせていく。このまま死んでしまったとしても、後悔はしない。
逞しい首に再び手を回して、唇を塞いだ。このままどこまでも可笑しくなってしまおう。ウタカタ様の思うがまま、本能のままに。