星屑イルミネーション
世界中の子どもたちがソリを探して空を見上げる夜に、ぷかぷかとシャボンが浮かんでいる。イヴの終わりが近づくに連れて、街の灯もぽつりぽつりと消えていった。代わりに輝くのは、満天の星屑。クリスマスと流星群が重なる夜なんて、贅沢すぎて罰が当たってしまいそう。覚えたてのクリスマスソングを口ずさんで、ついでに流れ星にお祈りをした。今だったら、サンタさんにも出会えてしまえそう。
「ずいぶんと機嫌がいいな」
ウタカタ様の声に振り返ると、優しい微笑みが私を迎えてくれていた。嬉しくなって、ぎゅっと抱きついて甘えてみる。ウタカタ様がくれたプレゼントは、何にも変えがたい素敵な物たちだ。
上からも下からも降り注ぐ光たち。そして薬指に輝くダイヤモンド。こんなに幸せをもらって、私は大丈夫なのだろうか。そんな不安も杞憂に終わってしまうほど、ウタカタ様の腕の中は安心する。
「こんな素敵な夜をもらって、私は幸せ者です」
「大げさだな。喜んでもらえたのなら、いろいろ調べた甲斐があったが」
「ねえ、ウタカタ様。私からも何かお返しをしないと。何か欲しいものはありますか?」
「そうだな……」
考えるように上を向いたウタカタ様の目に、流れ星がきらりと映り込んだ。その光に見とれていると、ふいに顎を掴まれて口付けをされる。今日のウタカタ様は、何だか甘い。これも、クリスマスの魔法なのだろうか。
背中から肩に腕を回して距離を近づけると、唇が離れて温かい吐息が顔にかかった。艶めかしい時に、頬がかあっと赤くなる。
「物はいらないから、今夜うちに帰ったら、思う存分楽しませてもらおうかな」
「……ウタカタ様、それって!!」
慌てた私の口を、今度は手で塞がれる。愛玩するように撫でられて、目だけで羞恥心を訴える。
ウタカタ様は、そんな私に気づかないように、低い声で聖歌を歌い始めた。初めて聞く歌声に、身体を預けて聴き惚れるように目を閉じる。星が流れる音が、ソリに付いている鈴の音に重なって夜空に響いている気がした。
甘い一時に、口元を緩めて愛を囁く。街の灯が全て消えた夜に、サンタクロースは星屑を攫っていくのだ。