お決まりの3択
ウタカタ様と夫婦になって1週間。まだまだ家事にはなれないけど、少しは妻らしくなれているかしら。でも、せっかく結婚したんだからこれだけはやらなくちゃ。遁兵衛に教えてもらった、新婚夫婦が絶対にやらなければいけない儀式。「ウタカタ様、お風呂ですか?ご飯ですか?それとも私ですか?」
玄関でウタカタ様を迎えて、開口一番に質問をする。やっと言えた。ウタカタ様との結婚が決まって、祝福する遁兵衛がこっそり教えてくれた言葉。これを言えば、ウタカタ様は私にメロメロらしい。
「…………は?」
期待とは裏腹に、ウタカタ様は口を大きく開けてポカンとしてる。あれ?私、変なこと言った?
「ですから、お風呂かご飯か私かと……」
「それはわかる。が、本気でそんなことを言うやつがいるとはな」
ウタカタ様は呆れた顔をしながら私の顔を見た。全然メロメロな雰囲気じゃない。どうして?遁兵衛は確かにこう言っていたのに。
「あ、あの……私、おかしいこと言いました……?」
「いや、お前らしくていいんじゃないか?」
ガシガシと私の頭を撫でたあと、ウタカタ様は靴を脱いで部屋の奥へと向かう。残された私に、後ろ姿のまま届く声。
「飯はお前と食べる。風呂も今日は一緒だ。どれかなんて選べないから、さっさとこっちに来い」
(遁兵衛、これは成功なのでしょうか?)