夜空を駆ける

 静かな空に、そよぐ前髪。なんだかうざったくなって、片手で髪を掴んだ。

「ウタカタ様、どうしたんですか?」

 隣に座っていたホタルが顔をのぞき込む。不安が溢れてこぼれ落ちる。どうしてか、わからない。

「ホタル」

 強く抱きしめて、声を聞いて、それでも足りない。ホタルは本当に、ここにいるのだろうか。
 幻のように儚い想いが、夜空を駆け抜けた。





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