「私を忘れないで」と言ったのは
小さく可愛らしい青い花。砦に咲いていたのを思い出す。「綺麗でしょう?この花、私のお気に入りなんです」
「勿忘草、か」
「なんだか悲しい名前だけど……少しウタカタ様に似てる気がして」
白い指先で花片を撫でて、ホタルは悲しげに微笑んだ。
「花言葉は、真実の愛」
「え?」
「それと、私を忘れないで」
ホタルの隣にしゃがみ、小さな肩を抱いた。
「ぴったりじゃねぇか。オレたちに」
「ウタカタ様」
「でも、こんなものなくたって、忘れたりしない」
柔らかい唇はどんな味だったか。あの日の約束は虚ろぎ消えていく。忘れたく、ないのに。