甘い蜜、どろり。

 黄金色の瓶を抱えて、宿への帰り道を急いだ。甘い甘いこの蜜は、師匠へのお土産。疲れた体を癒すには、甘いものが一番!

「ウタカタ師匠、蜂蜜、食べませんか?」

 銀色のスプーンに、黄金色の蜜を絡めて。きらきら輝くそれを、ウタカタ様の口に差しだした。赤い舌がそれを舐めとって、妖艶な動きに目が奪われる。

「美味いよ。わざわざありがとな、ホタル」
「いえいえ。師匠の健康を気遣うのも、弟子の役目です!!」
「……じゃあ今日は、もっと癒してもらってもいいか?」
「もちろん!何をすれば……」

 赤墨色の髪が目の前を横切って、膝の上におさまる。ゆっくり目を閉じるウタカタ様は、なんだか子供みたいで……。髪を指で掬いながら撫でれば、気持ちよさそうに口角があがった。

「うん、落ち着くな」
「このまま寝ていいですよ」
「そうする。ホタル、足が痺れたら言えよ」
「はい。でも、まだまだ大丈夫です」

 瓶の縁に付いていた蜂蜜が、どろりと畳に落ちた。甘い香りと緩やかな時間に、ささやかな子守歌を口ずさんでとろけていく。





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