ゆらり、ゆうらり
こっくりこっくり。そんな擬音がよく似合う。まだ箸を持ったまま、並んだ料理も口付かず。こっくりこっくり、船を漕いで。「ホタル、髪が味噌汁に入るぞ」
話かけても船は止まらない。仕方なしに箸をおいて、転覆しそうな船を抱き起こす。無邪気な寝顔に、少し心臓を弾ませながら。
「ったく、世話のかかる弟子だな」
布団に横たえ、乱れた浴衣を直し、せめてもの仕返しにと額にキスをする。生殺し、なんて気にくわないが、可愛い弟子のためなら飲み込んでやるか。ゆらりゆうらり、崩れそうな理性を押さえ、残った夕食に向かって足を進めた。