シャボン玉、割った。

 木陰で眠るウタカタ様を遠くから見つめる。こんな森の中で、あんなにぐっすり眠れるなんて、師匠はあのシャボン玉をよほど信頼しているのね。

「しーしょう、お昼寝はもう終わりですよ」

 周りに浮かぶシャボン玉を割って、目を覚ましたウタカタ様の顔を覗く。昔は「近い!」なんて慌てていたのに、今は余裕気に欠伸をかましているのがおかしい。

「もうそんな時間か」
「もう、寝坊助ですね」
「誰のせいだと思ってるんだよ」
「え?」

 師匠の目の下に浮かぶ黒い隈。私と旅をするようになってから、増えたような気がする。もしかして、もしかすると

「師匠、夜な夜な私に隠れて修行しているんですか!?」
「は……?」
「だから寝不足なんですね!弟子に努力している姿を見られないようにするなんて……さすがです!」
「……まぁ、そういうことにしておくか」

 ウタカタ様が起き上がって、近くにあったシャボン玉を割った。パチンと飛沫が放射状に広がって、私たちの旅がまた始まる。





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