黒猫が不幸の象徴なんて、

 人間は見た目や噂だけで物事を判断しすぎる。そんなことをしているから、いつまで経っても何も成長しない、同じことの繰り返しなんだ。
 目の前を通り過ぎた黒猫に浴びせられた罵声を聞いて、ウタカタ様はそう言った。久々に見る、怪訝な顔。忌み嫌われる黒色。ウタカタ様は一体誰を、その黒に重ねているんだろう。

「本当ですよね。黒猫だってとっても可愛いのに」
「はっ……ホタルくらい単純な思考だったら、世の中は平和だろうな」
「な、ひどいです!!」
「褒めているんだよ。ホタルは優しい、ってな」

 小さく口角を上げたウタカタ様は、そのまま背を向けて歩きだす。飄々としたその姿は、どこかさっきの黒猫に似ていた。


Thanks for 一青