シャボンに映る恋心

 お母さんとの料理は大好き。いろんな野菜も、お母さんが料理すればお花の形になったり、すごく可愛くなる。ボタンもやりたいって言ったけど、まだ危ないからダメだって。だから代わりに、いろんな形のホットケーキを焼くの。

「お母さん、見て!ボタンが作ったハート型!!」
「あら、上手じゃないボタンったら」

 今日は上手く焼けた!初めてボタン1人で作ったんだよ。ハートの上にお母さんの作った生クリームとじいさまからもらった苺を乗せて、ちょっと形が崩れちゃったかな?でもおいしそう。

「ボタン、それは誰にあげるの?」
「お父さんに決まってるじゃん!」
「あ、おいしそうなホットケーキ!」
「シオン、それ絶対食べちゃダメだからね!」

 エプロンを脱いで、お父さんを探す。大好きな大好きなお父さん。ホットケーキ喜んでくれるかな?ちゃんと食べてくれるかな?

「お父さーん!」

 ボタンが思いきり抱きついても、強いお父さんはびくともしない。足にしがみついてたら片手で持ち上げられて、大きな腕で抱っこされた。

「相変わらず元気だな、ボタンは」
「えへへ。ボタンね、お父さんのためにホットケーキ作ったんだよ!」
「本当か?」
「うん!今日はボタン1人で作ったんだから!」
「すごいじゃないか。さすが、オレの娘」

 頭をぐりぐり撫でられて、お父さんは笑ってくれた。周りに浮かぶシャボン玉はいつも綺麗。ボタンが吹くのと違って、ずっと消えないんだ。

「ただいま。ホタル、シオン」
「おかえりなさい、ウタカタ様」
「おかえりなさい、お父さん」
「お父さん、こっち!ボタンが作ったホットケーキ!」

 お父さんの袖を引っ張って、部屋の奥へ走る。早く見てほしい、早く食べてほしい。大好きと、ありがとうの気持ちを、ボタンのお父さんに。



(純朴なる初恋)(壊れることを知らず)