受け継がれし遺伝子

 青い空に白い洗濯物が映える。4人分の服が風に舞い、なんだか幸せな気分になる。思わず鼻歌を歌えば、目の前にあるシーツが揺れた。

「お母さん」

 シーツの後ろから現れたのは、小さなウタカタ様。細い目もさらさらな髪も、父親に瓜二つ。

「どうしたの?シオン」
「……お父さん、姉ちゃんだけ連れて行っちゃった」

 口を尖らせてシオンは言う。可愛いと思ってしまうのは親ばかかしら。小さな上着を干したあと、諭すようにシオンに話しかける。

「今日はいつもより遠くに行くって言ってたからね。シオンはまだ小さいから疲れちゃうでしょう?」
「疲れたりなんてしないよ!ぼく……じゃなくて、オレはもう立派な男だ!」

 ムキになって叫ぶところはまだまだ子ども。修行をしてくれないウタカタ様の顔が、毎日落書きだらけなのもしょうがないのかもしれない。

「じゃあお洗濯が終わったら、お母さんと一緒に散歩に行きましょうか」
「本当!?……でもお母さんじゃつまんないよ」

 憎まれ口を叩きつつ、早く終わるように私を手伝うシオン。素直になれないところは誰に似たのかしら。



(虚ろぎ重なる)(貴方の面影)