大キライ、また明日
※学パロ腕時計を確認しながら、プリントに向かって顰めっ面をしているホタルの顔を見つめる。この問題に取りかかってから、もう20分か。個人補習をするだけあって、その実力は呆れてしまうほど低い。
「もう解けたか?葛城」
「も、もうちょっと……」
ホタルは眉をハの字に曲げ、プリントを掲げながら泣きそうな声を出す。そんな様子を見ながら、自然とため息が出た。この調子じゃあ、今度のテストも赤点だな。
「ちょっと先生、頑張ってる生徒の前でため息なんてつかないでくださいよ!」
「ため息もつきたくなるだろう。お前、いい加減この公式覚えないと、また赤点だぞ?」
オレの言葉に、ホタルは慌てた表情をしてまたプリントに向き直る。困った表情に呆れつつも、見捨てる気にはなれない。
「う~、なんでこんなに難しいんですか」
「泣き言を言う前に、ペンを動かせ」
「私、数学なんて大キライです」
一向に埋まらない解答欄を恨めしげに見ながら、ホタルが呟く。その声にまたため息をつきながら、時計を見つめた。いつの間にか、閉校の時間が近づいている。
「しょうがないな。また明日見てやるよ」
「ほんとうですか!?」
「一応オレも教師だしな。そのかわり、明日までにその問題復習しておけよ」
明るく返事をするホタルを見ながら、この補習が楽しみになっている自分に気づく。成長しないのはお互い様かと、苦笑いをこぼしながら、窓から見える夕焼け空を仰いだ。