絶えず君を、想う
ウタカタという名の人生が幸せだったかと問われれば、その答えはノーだろう。我ながら、散々な人生だったと思う。血霧の里と呼ばれた故郷。その故郷を思い、差し出した身体に、離れていく人々。人間の嫌なところを、これでもかというくらいに味わった。人を信じるだけ無駄だと、何度も自分に言い聞かせた。なのに、な。今はこんなにも満たされている。後悔はたくさんある。自分の人生に満足感など感じるはずもない。
けれど、たしかにオレは生きていたんだと、胸を張っていえる。里から逃げ、ただ時間が過ぎるのを待っていたあの日々からは想像のできない、満たされた感情。オレにとってあの数週間は、――月並みの言葉でしか表せないが――奇跡と呼ぶにふさわしい日々だったのだろう。
ホタル
今はもう、音にはならない。だけど、きっとお前には届くだろう。師匠の、オレの、最期の想いが。
お前は 生きろ
この世からオレが消えるとき、オレの想いを受け継ぐ存在が確かに生きている。その素晴らしさを、お前は教えてくれた。何年もの間、目を反らしていた輝きを、オレに見せてくれた。お前の願いは、最後まで叶えられなかったが、オレはずっと、傍にいるから。だから、ホタル。どうか、幸せに。