変わらぬ愛を、想う
障子の隙間から差す朝日に、ゆっくりと瞼を開ける。もう、朝か。そんなことを考えながら、大きな欠伸をひとつした。季節の変わり目の朝は、少し肌寒い。はだけていた着物を片手で整えながら、まだ眠るホタルを見つめた。長い睫毛が震えて、薄く開いた唇から吐息が漏れている。起きる気配のない表情に、自然と破顔する。夢でも見ているのだろうか。穏やかに弧を描く唇を、そっと指でなぞった。
「ホタル」
柔らかな感触は、いつでもオレの心を荒だたせる。どんなに求めて与えられても、満足することはない。ひとりの女にこんなに夢中になるなんて、昔のオレが知ったらどんな顔をするだろうか。それくらい、ホタルはオレの全てを変えた。
「ウタカタ……さ、ま」
「悪い、起こしたか?」
「いえ……もう、朝ですか?」
「ああ」
瞼を開くのを躊躇うように眉間に皺を寄せ、ホタルは眩しそうに朝日を見上げた。それでもまだ寝たりないのか、枕にしていたオレの手を両腕で抱き、手の甲に頬を押しつけてきた。
「もうちょっと……このまま……」
「まだ眠いのか?」
「ん……」
返事も適当に、ホタルはまたすやすやと寝息をたてる。その様子にまた笑みをこぼし、ホタルをかかえるようにして瞼を閉じた。
なんでもないような時が、オレには何よりも愛おしい。鼻孔を擽るホタルの香りに、また幸せが込み上げていく。
「ホタル」
この気持ちを言葉にしたら、結局またここに行き着くのだろう。ありきたりで、聞き飽きた台詞だろうが、ホタルなら受け入れてくれるはずだ。以前は阻まれたこの言葉も、今なら素直に伝えられる。きっとこれも、ホタルのおかげだ。
「愛している」