夜の寝室

 ぎゅうっと。文字通りぎゅうっとホタルを抱きしめた。いつも変わらぬ柔らかさ。全てを癒してくれる温もり。ホタルを抱きしめているだけで、安心できる。愛しい愛しいホタル。オレのホタル。

「……ウタカタ様、いい加減離してください」
「なんだ。人が珍しく素直になってやってんのに」
「タイミングが悪いんですよ。もっと余裕のあるときに甘えてくれればいいのに」
「オレは別に、甘えてなんか」

 手に持っていた針を箱にしまい、ホタルがオレの頭に額当てを巻く。きゅっと縛られ額に布が密着し、ホタルが満足そうに笑った。

「もう破っちゃダメですよ」

 そう言ったホタルの表情は、まるで母親のよう。そのホタルに抱き着くオレは、さながら息子のようなものか。

「ホタル、愛してるぞ」
「き、急にどうしたんですか」
「ホタルはいい母親になる気がする。母親になったホタルが見てみたいな。もちろん父親はオレだ」

 そう言って額に口付ければ、ホタルは真っ赤になってオレの胸に顔を埋めた。今度はオレが父親になる番。赤子をあやすようにホタルを撫で、優しく抱きしめる。

「今のって、プ、プロポーズですか?」
「そうとってくれてもかまわないが?」
「ウタカタ様の、ばか」
「なんでだよ」
「いつもずるいです。私ばっかりドキドキして」
「ばかだな。オレはいつだってホタルにドキドキしてるんだ」

 こうやってホタルを抱きしめて、傍にいるだけで心臓が張り裂けそうになる。もう1度額に口付けて、上目遣いにオレを見つめるホタルにまた心臓が動いた。本当、愛らしいヤツだ。

「ウタカタ様」
「ホタル」
「……今夜は、優しくしてくださいね」
「オレはいつも優しいだろう」
「最近ちょっと激しいです」
「激しいとか言うな」

 今度は唇にキス。ホタルの感触を確かめながら、ゆっくりと押し倒した。解けた額当てが、するりと畳に落ちる。今宵はきっと、いつも以上に甘い夜になるだろう。