俺についてくればいい
「悔いているのか?」驚くほど澄んだ声で、ウタカタ様が私に問いかける。俯いていた顔をあげてウタカタ様を見上げれば、声に合わない悲しげな表情で私を見つめていた。
「悔いてなんかいません。これは、私が自分で選んだ道ですから」
「……そうか」
「ただ、たまにわからなくなります。どれが本当に、正しいのか」
掌を染めた紅は、何度拭っても完璧には消えない。忍の道に、死はつきもの。そんなの痛いくらいに知っている。だからこそ、わからない。
「自分が一体どの道に進めばいいのか、わからなくなるんです」
「そんなの、簡単だ。オレについてくればいい」
「え……?」
「お前はオレの弟子だ。行く先がわからないのなら、オレについてこい。——ホタルが望んだことだろう」
私のとは違う綺麗な手が、頬をそっと包み込む。ウタカタ様くらい、師匠くらい強くなれば、何も傷つけずに済むのかしら。
「ウタカタ師匠」
「いいんだ、泣いても。オレが隠してやる」
「……忍は涙を見せないものです」
「そうだな」
こんな冷たい世界の中、ウタカタ様はこんなにも温かい。頬を伝う雫が見えないように、ウタカタ様の胸に、額を押し付けた。