冷たい手で繋がる

 白く色づく息を手に吹きかけ、空を覆う黒い雲を見上げた。町を出てから大分時間がたったか。北へ北へと歩くうちに、景色はいつしか銀色へと変わっていた。おざなりに羽織った上着だけでは、到底防げる寒さではない。

「寒いな」
「はい。でも、久しぶりに雪が見られて嬉しいです」

 鼻の先を少し赤くしながら、ホタルがふわりと微笑む。その言葉は虚勢ではないようで、ひらひらと舞う雪を手の平へ乗せ、心底嬉しそうに見つめていた。

「この様子だと、今夜は積もるだろうな」
「でしたら、野宿は難しいですね」
「少し時間はかかるが、この道を行けば次の町に着くはずだ。そこで宿を探せばいい」

 溶けた雪を名残惜しそうに指でなぞり、小さな手の平がぎゅっと握られた。赤く凍えたそれが愛おしくて、思わずその手を握りしめる。

「ウタカタ師匠?」
「……冷たいな」

 上手い言い訳も見つからず、ホタルの手を握ったまま足を踏み出した。冷たい手の平から、微かに体温が伝ってくる。

「暖かいですよ。雪なんかに負けないくらい、暖かい」

 握り返された手の平と、横から聞こえるホタルの声。白い息は相変わらず、降り積もる雪へ溶けていく。繋いだ手の温もりが、場違いなほど暖かく感じた。




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