遺すのは、感謝と呪縛
死に逝く瞬間、ホタルのことが頭を過った。悲しいはずなのに、なんだか嬉しくなる。
「……ホタル…………」
愛しい人の名前、笑顔、温もり、優しさ。オレの走馬灯がこんなにも安らげるものだったなんて。
師匠への蟠りも、生への蔑みも、全部ホタルが消してくれた。この命が消える瞬間、決して最高な人生ではなかった。けれど、確かに幸せだったと感じる。
「ありがと、な……」
一滴の涙が地面へ落ち、2度と消えない沁みになった。ここに、オレの想いを遺そう。ホタル、絶対にオレを、忘れるな。
(確かに愛しい何かを感じながら死ねたら幸せ、例えこの白が純でなくとも、な)