刹那の幸せに舞う


 綺麗なものが好きだった。見ているだけで心癒される、まるで天使のような女。


「ウタカタ師匠」


 やっと、やっと手に入れた。もう2度と離すもんか。これから先、2人でどこに行こう。遠い国や、海にだって行きたい。修行もいいが、たまにはゆっくり休もうか。温泉ってのもいいな。ホタルは行ったことがあるだろうか。


「……ホタ、ル」


 色々やりたいことがあったんだ。ホタルと、もっと一緒にいたかったんだ。全部これからだったと言うのに、オレはここで終わるのか。

 最後のシャボン玉が空へ舞う。ホタルのもとへ届けばいい。せめて一瞬でも、幸せになれたのだから。





(美しさを秘める刹那を求め続けた末路がこれでは、)





Thanks for 濁声