My sister is like my sister



※姉弟パロ

「ウタカター!」

 4時限目の終わりのチャイムと共に、教室内の視線が一気にオレを突き刺した。好奇の目、驚愕の目、そして嫉妬の目。様々な目に囲まれながら廊下に近づくと、その視線の原因となった人物がニコニコと笑みを浮かべながら立っていた。

「ウタカタ、今日お弁当忘れたでしょう。お昼困ると思って、わざわざ届けに……」
「来い」

 全身に注がれる視線から逃れるため、ホタル――もとい姉貴の腕を引っ張り人気のない屋上へと歩いた。

「ウタカタ?どうしたの?さっきからずっと黙って……」
「どういうつもりだ、ホタル。教室にまで来やがって」
「だからそれは、ウタカタがお弁当を忘れたから」

 青色の巾着を持ち上げ、「はい。お姉ちゃんの手作り弁当」と、さっきと同じニコニコを添えながらホタルはそれを差し出した。オレは弁当を忘れるなどという大失態を犯した自分を責めながら、半ば引ったくるようにしてそれを奪う。

「ったく……クラスの連中にホタルのことばれたじゃねーかよ」
「え?」
「あーあ。こりゃ教室に戻ったら質問攻めだな」

 愛らしい顔立ちに、スタイル抜群の体。こんな姉貴がいると知れたら、思春期真っ只中の男どもがオレを放っておくわけがない。オレはそんな面倒なことは嫌だ。ただでさえこいつには迷惑してるんだ。これ以上仕事を増やされてたまるか。

「ん、ウタカタ」
「なんだよ」
「何度も言うけど、『ホタル』じゃなくて『お姉ちゃん』」
「…………」
「私たちは姉弟なんだから。――さ、お昼休み終わっちゃう。早くお弁当食べちゃいましょう」

 ただでさえ養子同士の義理の姉弟。オレより頭2つ分も小さく、自分で作った弁当をあんな楽しそうな顔で開けるホタルを、姉貴だなんて認めたくない。普通妹だろ、ああいうタイプは。オレたちは絶対に生まれる順番を間違えた。絶対そうに決まってる。

「ウタカタ?どうしたの?」
「オレにちゃんと呼んでほしいなら、あんたももっと姉らしくしろよ」
「え……?」
「なんか思えないんだよ。ホタルが姉貴だって」

 開けた弁当はお世辞にも上手いとは言えない。きっと爺さん――遁兵衛が旅行でいなかったからだろう。

「どうして?」
「あ?」
「私は……ウタカタのお姉ちゃんじゃないの?」

 目を潤ませ、上目遣いにオレを見つめる。身内じゃなければ、そこそこイイ線行ってるんじゃないかと思うくらい、まあ、可愛らしい。

「私はずっと、ウタカタを家族だと思ってるのに……」
「そういう意味じゃあ、」
「じゃあ、呼んでよ。お姉ちゃんって」

 そんなにオレに「姉ちゃん」と呼んでほしいのか。ホタルの考えに首を傾げながらも、少し焦げた卵焼きに箸をつける。端から見たら姉弟と言うより恋人だろう。誰かに見られないといいが。

「……姉ちゃん………」

 小さい声でぼそりと呼ぶと、何に感動したのか、ホタルは箸を投げ出し、のしかからん勢いでオレを抱きしめ、そのでかい胸にオレの顔を押し付ける。(きっとホタルは無意識だろうが、そんなのは関係ない)

「お、おい、苦し……」
「ウタカタ!良かった……!私ずっと不安だったの。私もウタカタも遁兵衛も、誰も血が繋がってない。そんな家にいて、ウタカタが幸せなのかって」
「…………」
「でもちゃんと、私のことお姉ちゃんって、家族って思ってくれてたのね」
「……当たり前だろ」

 辛かった孤児院での生活。ずっと繋がりを求めていた。家族ができると知って、心から嬉しかった。

「チビでアホでガキだけど、ホタルはオレの大切な姉ちゃんだよ」
「ウタカタ……!」

 力強くオレを抱きしめて(感動がホタルの胸で台なしだ)あろうことか頭を撫で始める。ホタルを突き放そうともがいても、変な体勢のせいで上手く力が入らない。

「ホタル、だれか来たら誤解される……」
「ウタカタ、大好きよ。私の大切な弟……」
「――!ホタル!姉ちゃん!離せ!!足音が……!」




「――!?ウタカタ!お前いつの間にそんな可愛らしい彼女を……」
「やっぱりお前かよ!シラナミ!!」