明日への約束
「ナルトさん、お元気でしょうか」「どうだろうな。だが、あれから随分と経つんだ。少し大人しくなってるといいが」
「ふふっ……。あれから5年ですか……早いですね」
木ノ葉の里への道を歩きながら、今まで旅した時間を思い出す。
里を抜け出し、ホタルと出会い、尾獣を奪われ死に、禁術によって生き返り。そして今、あれほど嫌がっていた師として、ホタルの隣に立っている。
「懐かしいなぁ。あの頃が嘘みたいに、今の世は平和で。これも、ナルトさんのおかげでしょうか」
大きな花束を抱きしめ、ホタルがにこりと笑った。多くの犠牲を出した戦争も、尾獣を狙った暁も、この世界にはもういない。残るのは、眩しすぎる平和。
「おーい!ウタカター、ホタルー!!」
「あっ!ナルトさん!!」
木ノ葉の門をくぐると、懐かしい声が大声で名前を呼ぶ。嬉しそうに駆けていくホタルのあとを追い、いくらか大人っぽくなった姿を見つめた。
「お久しぶりです、ナルトさん」
「久しぶり!ホタルってば、大人っぽくなったなあ~」
「ナルトも少しは大人になったか?」
「あったりまえだってばよ!そうじゃなきゃ、2人を木ノ葉に招待したりしないだろ?」
腰に手をあて、自慢げに胸をはるナルトに笑い、変わらない明るさに安堵する。が、花束を渡すホタルに照れているのは……少しいただけない。
「なんだか照れるってばよ。ホタルってば、本当に綺麗に……」
「ナルト。ホタルに木ノ葉を案内してくれないか?誰でもいい……いや、できれば女を頼む」
「それだったらサクラちゃんに頼めば……でも、オレとウタカタはどうすんだ?」
「少し2人で話がしたい。ホタル、しばらくいいか?」
「わかりました」
ホタルと別れ、ナルトと2人で木ノ葉の里を歩く。ふと空を見上げれば、火影を司った立派な石像。その中に見慣れた顔を見つけ、思わず笑みがこぼれた。
「にしても、本当に久しぶりだなぁ」
「その台詞、何度目だ?」
「しょうがないってばよ!本当に久しぶりなんだから!」
「まあな。それにしても、まさかナルトが火影になるとはな……木ノ葉は大丈夫か?」
「あー!オレってば、かなーり修業してかなーり強くなったんだからな!馬鹿にすんなってばよ!!」
「悪い悪い。冗談だよ」
自分よりいくらか低い場所にある、立派な火影の装束。まだ垢抜けない部分もあるが、オレたちが旅を続けている間、ナルトも夢を叶えていた。誇らしげに袖を見つめるナルトの目は、どこかホタルに似ている。
「ったく……。そっちはどうなんだ?ちゃんとホタルの師匠やってんのか?」
「まあな」
「へぇ~……」
「……なんだ、その顔は」
「べっつに~。ウタカタし・しょ・う!」
「その呼び方、少し古いな」
「へ?」
行き交う人々。平穏に包まれた里。新しく生まれた火影は、たくさんの人を救ってきた。人柱力という壁を乗り越え、みんなに認められた。
「似合ってるな。その格好」
「だろ?オレってば、火影になる男だったからな!」
「かもな」
「……なんか気持ち悪いってばよ。ウタカタにそんな褒められると」
「感謝してるんだよ。お前には」
火影岩の下に立ち、木ノ葉の里を眺める。故郷とは違う、明るい里。眩しい太陽に目を細めると、隣に立ったナルトが呟く。
「良いところだろ?オレの自慢の
「ナルトが作ったんだろう?」
「オレだけじゃない。サクラちゃんやカカシ先生。みんなの力があったからこそ、こんな平和な里になったんだ」
やわらかい風に、シャボン玉を飛ばした。ホタルは木ノ葉を楽しんでいるだろうか。
「……ナルトがいなければ、オレは知らずにいた。師匠の想いも、ホタルの想いも」
「…………」
「あれから色々あったが、あの時ナルトに出会えて良かったよ。でなきゃ、オレは本当に大切なものを無くすところだった」
飛んできた伝書鳩に括られた手紙を読み、観光を楽しんでいるホタルを思う。平和な時間。当たり前のようで、とても貴重な、ホタルとの時間。
「……大切にしてるんだな、ホタルのこと」
「ああ。弟子でも恋人でも言い表せない、大切な人だよ」
「へぇ~、クールなウタカタ師匠が、そんな熱いことを言うなんてな」
「気持ち悪いか?」
「いや、そうでもないってばよ」
頭の後ろに腕を組み、背中を向けるナルト。大きく息を吸い込むと、ニッと笑ってこちらを振り返った。
「良かったってばよ!ホタルもウタカタも、幸せそうで」
「それはこっちの台詞だ。ナルトたちが幸せそうで、本当に良かった」
「ニヒヒッ。そろそろサクラちゃんを迎えに行かなきゃだな!」
「ああ」
「そういえばナルト、聞いた?さっきホタルさんから聞いて、私びっくりしちゃった」
「え?なんだってばよ、サクラちゃん」
「ウタカタ様、まだナルトさんに言ってないんですか?」
「ああ」
「なんだってばよ!みんなして!早く教えてくれってばよ!!」
「オレたち、婚約したんだ」
「なんだ。そんなことかってば…………えええええ!!!!」