僕だけに見せて

 肩まですっぽり覆ったシーツの中に手を入れ、手探りでホタルの体をなぞる。びくりと体を強張らせながら、頬を染めて恥じらう仕種は愛らしかった。男慣れしていない体に、オレの唇が跡を残す。

「まだ慣れないのか」
「だって……まだ数える程度しかしてないじゃないですか」
「お前がいいなら、オレはそれを数えられなくしてもいいんだぞ?」

 至近距離で口角をあげると、ホタルは慌てて顔を伏せた。下手に誘われるより、こういう うぶな反応のほうが、心が擽られる。この間までの純潔は、全てオレが奪った。この白い肌を知るのは、世界にオレだけだ。

「後悔してないか?」
「後悔はしてません。師匠以外の人とこんなこと……。ただ……」
「ただ?」
「やっぱり、恥ずかしい」

 動きを止めないオレの右手を咎めるように、ホタルの手が重なる。真っ直ぐに見つめれば、潤んだ視線が重なった。官能的な、唇の動き。

「忍は嫌です。灯かりがなくても、周りが見えてしまう」
「裸を見られるのは嫌か?」
「師匠はいつも脱いでるようなものだから、わからないんですよ」
「人を露出狂みたいに言うな」

 ホタルを覆うシーツを剥ごうとすると、しっかりと拒まれ肩透かしをくらう。嫌がるホタルを無理矢理襲うつもりはないが、こうも抵抗されるといじめたくなるのが性。シーツの上からホタルに覆いかぶさり、首筋に顔を埋める。

「やっ……し、しょ……」
「こういう時は、名前で呼べと言っただろ」
「うたか、あっ……」

 耳を甘噛みしながら背中を撫でれば、ホタルの体の力は抜ける。涙目になりながら無抵抗な姿は、ぞくぞくとオレを踊らせた。控えめな喘ぎに耳を澄ませながら、触れ合う面積を広くする。

「恥じらうお前もいいが、そろそろ次の段階に進みたくてな」
「ウタカタさま……?」
「安心しろ。全部オレが教えてやるから」

 あどけない唇を塞ぎ、ホタルの味を舌に焼き付けた。今宵はどんなホタルが見られるのだろう。そんな妄想を膨らませながら、白い肌を隠すシーツを今度こそ剥ぎ取った。