Cherish 愛し君へ

 寂しいのには慣れていた。里のためと背中に枷を背負った瞬間、名付けられた名前。
 人間兵器。禁術の器。
 どんな酷いことを言われても平気だった。平気なふりをしていた。遁兵衛に心配をかけるわけにはいかない。この道を選んだのは私。濡らした枕は忘れればいい。

「ウタ、カタ……様」

 掠れた声で名前を呼べば、貴方はゆっくりと手を伸ばす。身体が重くて頭が上手く働かない。わかるのは、指先の熱だけ。

「ホタル……」

 始まりはただの憧れだった。この人といれば、強くなれるかもしれない。里の信頼を取り戻し、もとに戻れるかもしれない。

 でも、時が経つにつれてそれは変わっていった。


 傷だらけの身体。
 荒く途切れた呼吸。

 脳裏を走るのはいつかの走馬灯。


「俺を師匠と呼ぶな!」


 どうしていいかわからなかった


「痛いところをついてくるな」


 ただ、諦めたくなかった


「来ないのか」


 貴方に認めてほしかった


「助けたわけじゃない」


 貴方とずっと一緒にいたかった



 もしも世界が終わりを告げるとしても、私はずっと、貴方に手を伸ばし続けるよ。



 ウタカタ様に出会えたのは運命だった
 じゃなきゃ、こんなに幸せなはずがない
 傍にいるだけで感じる喜び
 全部、ウタカタ様が教えてくれた


「「……ありがとう」」


 伝う泪は悲しいからじゃない。貴方と一緒なら、消えるのだって怖くない。

 もしもこの世の果てに世界があるのだとしたら、また貴方に出会いたい。求め続けた愛情を、教えてくれた貴方に。