甘い香りがした。今まで嗅いだどんなものよりも、心をいっぱいに満たす香り。身体から逃がしたくなくて、息を止める。呼吸をするかわりに、腕の力を強めた。

「う、ウタカタ師匠……。急に、どうしたんですか?」

 戸惑う声に呼吸を再開し、ホタルの顔を覗く。その距離に慌てたようにもがく身体を、また抱きしめた。離すつもりなんてない。

「ウタカタ……師匠?」
「好きだ」
「へっ?」
「ホタルが、好きだ」

 理性で抑えられる気持ちじゃない。オレ以外のやつがホタルに触れるなんて堪えられない。気づいた頃にはもう遅い。この恋を止める術はない。

「ホタルが、好きなんだ」

 重なった手の平に、ホタルは何を思うのか。師弟の関係を壊し、新たに幸せを築けるのか。
 ホタルの返事を待たずに、唇を塞いで目を閉じる。自然と絡まった指先に、熱が灯った。