二人は祝福されなかった
こんな思いをするのはオレだけで良かった。人を憎むことも、恨むことも、ホタルには必要ない。なのに、何故だ?どうして運命はホタルを選んだ。これもオレへの報いなのか?「ウタカタ様、どこまで行きましょうか」
理想を語るには、真実を知りすぎた。幸せになりたいと願う女は、冷たい雫に濡らされる。
「泣くな、大丈夫だ」
何を根拠にそんなことが言えるのか。ホタルを傷つけるのは自分だ。けれど、ホタルを幸せにしてやれるのも自分だけなんだ。
「オレがお前を守る。絶対に死なせない」
愛なんて知らなくて良かった。離さなければいけないのに、この身が離れてくれない。オレはただ、ホタルに生きていてほしいだけだ。都合のいい器でなく、1人の人間として、幸せに生きていってほしい。
「……守らなくていい。傍にいてください。死なないで。生きて。お願いだから」
傍にいることが癒しだった。ホタルがいるだけで救われていた。女は幸せを願う。それはオレがいること。けれど、それが不幸への幕開けだとしたら?それでも怖くないと、ホタルは言いきれるのだろうか。
(重たすぎる枷は、天国へ上がれない)