私たちの選択ミス

 もっと他に方法があったのかもしれない。2人とも幸せに生きれる方法が。でも、ね。私の幸せには貴方が必要なんです。だから、例え最悪な結末になったとしても、私は後悔なんてしません。

「ウタカタ様、どこまで行きましょうか」

 暗がりの森を抜けて、辿り着いたのは静かな湖。2人の他には誰もいない。黙って私を抱きしめた貴方の鼓動が、静かに響く。

「本当に良かったのか。これで」
「良いんです。ウタカタ様がいれば、何も怖くない」
「…………ホタル」

 私たちにあてられた枷は大きい。人間兵器――私たちが生きているだけで、この世は危険にさらされる。

「うんと遠くに行きましょう。誰も追いつけないくらい、遠くに」
「ああ」
「そして、……今度こそ、幸せに……」


 掠れた声は途切れて
 熱い雫は止まらない


 どこで間違えてしまったの。私たちはただ里を救いたかった。ただ幸せに生きたかった。ひとりぼっちを選ぶには、もうお互いを知りすぎた。離れられない。離れたくない。

「泣くな、大丈夫だ」
「ウタカタ様……」
「オレがお前を守る。絶対に死なせない」

 嫌われものの2人が行き着くのは、天国か地獄か。私たちが出会えたのはきっと運命だった。独りでは大きすぎる枷も、きっと、 一緒ふたりなら。

「……守らなくていい。傍にいてください」
「ホタル、」
「死なないで。生きて。お願いだから」

 辛そうに歪む貴方の顔。どうして私たちは、幸せを選んではいけないのだろう。
 ただ一緒にいたかった、それだけなのに。


Thanks for 告別