歪で可愛い愛の証

 料理が下手なのは知っていた。以前砦で世話になった時、食事を作っていたのも遁兵衛だと。
 でもな、限度ってものがあるだろ。

「一生懸命作って……愛情は人三倍くらいこもっているんですけど……」

 俯きながら気まずそうに、小さな声でホタルは言った。今日はバレンタインというものらしく、オレもホタルからチョコレートをもらった。否、正確にはチョコレートらしきもの、だ。
 箱を開ければドロドロに溶けて原型をとどめていない茶色の塊。辛うじてチョコレートの香りはするが、とても食べ物と呼べる状態ではない。

「どう調理したらこうなるんだ」
「生チョコを作ろうとしたんですけど、チョコが固まってくれなくて……」

 いくら生チョコと言えど、これでは生すぎる。端っこはほぼ液体だ。手に取ればドロドロと流れてしまうだろう。

「無理して作らなくても、市販のを買えば良かったじゃねーか」
「だって!……手作りの方が、気持ちが伝わるじゃないですか……」

 まずい。いよいよホタルが泣きそうだ。見た目はどうにしろ、味はただのチョコレートのはずだ。それに、オレだってホタルからチョコレートをもらって嬉しくないわけでもない。

「わかった。ちゃんと食うよ。だから泣くな」

 手が汚れるのを覚悟で茶色の塊を掴む。一気に口に入れ、舌の上で溶かし……

「うっ!」

 思わず声が出てしまった。なんだこの味は。チョコレートが見事に分離してしまっている。吐き出そうかと迷っていると、ホタルが心配そうな眼差しで見つめていることに気づいた。

「やっぱり……不味いですよね……」

 また俯くホタルの肩に手を置き、一気に口の中の物を胃に流し込んだ。なんだかものすごく体に悪そうな気もするが、ホタルのためならしょうがない。

「……見た目はイマイチだけど、……美味かったよ」
「ウタカタ様……!」

 さっきまでのしおらしさはどこへ消えたのか。勢いよく抱きつかれ、チョコレートのダメージもあってオレはホタルに押し倒される形になる。

「ばかっ!何をしてる……」
「ウタカタ様、大好きです!!」



(今度はトリュフに挑戦しますね!)(……!?)


Thanks for 告別