終焉、君の亡骸

 繋いでいたはずの手は何処へ消えたのか。霞む視界に映る世界は灰色で。
 ぼんやりとする思考に、頬に当たる雨だけが鮮明に映し出される。

 あいつは、ホタルは、どこへ行ったのか。体が重い。確かにこの手を握っていたはずだ。でもあるはずの感触はそこにはない。ホタル、どこだ?

 激痛の走る体を無理矢理に起こす。周りにはたくさんの忍の死骸が散らばっていた。生い茂っていた木々もそこにはない。

「ホタ、ル」

 地獄絵図。そんな光景に悪寒が走る。ホタルはどこだ。一体何が起こったんだ。
 気持ちを伝え、守ると決めて、笑ったあの顔。さっきまでそこにあったはずの温もりがない。荒い息を吐きながらホタルを探す。どこだ、ホタル。返事をしてくれ。

「…………!?」

 見慣れた柑子色。露になった背中には、焼けただれた禁術の封印。探し求めた女から、チャクラは感じられない。

「ホタル……?」

 なんだ。訳がわからない。考えなければならないのに、現状を受け止められない。ホタルはどうした?この惨状は何があった?返事をしろ。ホタル。

「どうして……何が……」

 冷たい体を抱き起こし、思い出される記憶。笑ったホタルに、現れた追っ手。引き出された尾獣と、錯乱するオレを抱きしめたホタル。


 握った手はそこにあった。


「ウタカタ様は、私が守ります」


 最後に聞こえたのはホタルの声。


 守らなくて良かった。守るべきはオレのほうだ。また助けられた。今度はどうやって借りを返せばいい?愛しいと感じたそのときに、なぜこの手から離れてしまうのか。ホタル、



(一生離しはしないと決めたその瞬間に、離別はもう止まらないものとなった。)


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