重なるのは2つの桃色
「ウタカタ様ー?どこですかー?」ウタカタ様を呼ぶ声が青い空へと消える。さっきからずっと探している愛しのあの人は、放浪癖があるのかいつもいなくなってしまう。
「返事してください!ウタカタ様ー!!」
今日こそ修行をつけてもらおうと思っていたのに、やっぱり逃げ出してしまったのかしら。諦めて踵をかえそうとした時、視界の端に水色の着物が映る。
「あ……」
灯台もと暗し。ウタカタ様が一番お気に入りのこの場所を探すのを忘れていた。
顔を覗きこんでみると昼寝をしているようで、私が近づいても全く起きる気配がない。
「ふふっ、可愛い」
長い睫毛にあどけない寝顔。いつも見上げている顔が、こんなに近くにある。じっと見つめて、赤くなる頬。
「……好きです。ウタカタ様、」
寝ている貴方に想いを伝え、誰も周りにいないことを確認して顔を近づける。細まった視界にウタカタ様の顔がボヤけて……
「寝込みを襲うとは大したもんだな」
「う、ウタカタ様!?」
あと1センチ。その距離がウタカタ様の声で一気に広がる。
「え、いつから起きて……」
「ずっとだな。お前が俺オレを呼んでる辺りから」
「なっ、なら返事してください!!」
告白、そしてキス未遂。全部見られていたなんて。恥ずかしくて逃げ出そうとしたら、腕を掴まれて顔を近づけられる。
「ウタカタ様!」
「黙れよ。キス出来ないだろ?」
「っ……!」
(満足か?ホタル)(ウタカタ様の……ばかっ!)