天使祝詞
任務の合間に届いた朗報。ベストを脱ぎ捨てて、急いで病院へ向かう。緊張と不安と期待と、慌てる足が縺れ、何度も転びそうになる。「ホタル!」
白に包まれた病室に、静かに微笑むホタルがいた。その奥には、生まれたばかりの小さな命。
「元気な女の子ですよ」
ホタルは小さなベッドを見つめ、幸せそうな笑みを浮かべた。ゆっくり足を運び、自分の手のひらほどの顔を見つめる。
「……はぁ」
言葉にならない、安堵のため息が溢れてきた。柔らかい頬をつつき、静かに眠る我が子の感触にひたる。
「ホタル、お疲れさま」
起き上がったホタルの額に口づけ、髪をそっと撫でた。目が合ったホタルの顔は今までとは違う。もうすっかり、母親の表情だ。
「これからは、お父さんとお母さんなんですね」
「そうだな」
「ウタカタ様も、抱いてみてください。私とウタカタ様の、大切な娘」
ホタルに促され、ベッドの中の小さな我が子を持ち上げた。少し力をいれただけで潰れてしまいそうな、けれど温かく、精一杯生きている小さな体。
「……ぅー」
「――!」
いきなり開かれた大きな瞳に戸惑う。純粋で汚れのないその瞳に、オレの姿がしっかり映る。
「あ、笑った。この子、絶対にお父さん子になりますよ」
「そりゃ……楽しみだな」
「名前、何にしましょうか」
「考えてきたんだ。聞いてくれるか?」
「ええ、もちろん」