2人の恋愛事情

 霧隠れの里へ戻り、ツルギ達の了承も得て、平穏な生活が戻ってきた。久しぶりの額あては、なんだかこそばゆい。今日からまた、新しい毎日が始まるのか。

「ウタカタ様、ウタカタ師匠!!」
「――――!?!?」

 眩しい太陽に目を細めていたら、聞きなれた声に名前を呼ばれる。恐る恐る振り替えれば、柑子色の少女。

「お久しぶりです、師匠!」
「な……んでお前がここにいるんだ」
「ツルギさんから師匠がここにいると聞いて、とんできました!!」

 大きな荷物はここへ住むためか。明るい笑顔とめげない眼差しに、ため息が溢れる。

「帰れ、今すぐに」
「嫌です!私は師匠と一緒にいたいんです」
「周りの奴らだって心配するだろ」
「ちゃんと遁兵衛に許可はもらいました!」

 またグルかよ、あの爺さん。どう追い返そうか頭を抱えていると、ホタルは荷物を置いて台所へと足を運ぶ。

「おい、人の家で何してるんだ」
「師匠の世話は弟子がするもの。朝食は私が作ります」
「――!待て、お前の料理はきけ……」
「きゃー!炊飯器が爆発してっ!!」
「……はぁ」


(こんな生活も悪くない、か)