バスルームの狼

 禁術の騒動も一息つき、また元通りの砦での生活が始まった。平凡な日常が、こんなにも大切なものだったなんて。

「ウタカタ様、タオルここに置いておきますね」

 シャワーを浴びるウタカタ様に、扉ごしに声をかける。護衛の役目が終わっても、傍にいてくれることが嬉しい。このままずっと、一緒にいられないかしら。

「ホタル」
「はい、何です……きゃああ!!」

 名前を呼ばれて振り向けば、そこには半裸のウタカタ様。慌てて傍にあったタオルで顔を隠し、ウタカタ様に背を向ける。

「ど、どうして裸なんですか!」
「どうしてって……さっきまで風呂に入ってたんだから、当たり前だろ」
「それは、そうですけどっ……」

 一瞬目に入ってしまった逞しい身体が、脳内を反芻する。まだ婚姻の約束もしていない男の人の身体を見たなんて、遁兵衛にバレたら大変なことになってしまう。

「ウタカタ様、とりあえず服を着てください!」
「じゃあ、タオルを返してくれよ」
「っ…………」

 ぎゅっと目を瞑って、くしゃくしゃになったタオルを差し出した。ウタカタ様が近づく気配がする。

「ホタル」
「な、んです……か」
「もう大丈夫だから、目ぇ開けろ」
「え……」

 なんだか湿った身体に、目の前に見える肌色。訳がわからなくて上を向けば、にやりと笑ったウタカタ様が私を抱きしめていた。

「ウタカタ様……!?」
「お前の反応は誘っているようにしか見えないんだよ」
「んっ……」


(やっ、ウタカタ様……っ)(……また風呂に入らなきゃだな)