真昼の月は嘲笑う

 気がつけばいつも近くにいる女に抱く気持ち。これが恋だということは、とっくの昔に知っていた。
 別に初恋なんて訳じゃない。オレもいい大人、人並みの恋はしてきたつもりだ。けれど、

「ウタカタ様、お茶がはいりましたよ」

 こんな年端もいかない少女に恋をするなんて。向けられる笑顔は相変わらず眩しい。
 その気になれば、いつだって手籠めにし、その貞操を奪うことだってできる。それでも、この女を、ホタルを汚したくない。守ってやりたい。隣に座り茶を啜るホタルは、和やかに微笑んで。

「いいお天気ですね」

 きっと何も気づいていない。オレがホタルに恋をしているということも、今オレが考えていることも。ホタルは永遠に知らないのだろう。
 もしもオレがこんな体でなければ、こんな立場でなければ、ホタルと共に生きられたのか。せめて想いだけでも伝えられたら、幸せでいられるのに。


(伝えられない想いほど、邪魔なものはない)