麗しの白雪

 認めたくなんてなかった。恋だの愛だの、そんな幻想に想いを馳せるだけ時間の無駄。誰かを好きになったところで、どうせ守ってなんてやれないんだから。

「ウタカタ様?私の顔になにか付いていますか?」

 見ているつもりなんてなかった。いつのまにか、頭も心も、ホタルが支配している。無意識にホタルを追い、意識的に目を反らす。どうしようもない、衝動。

「ウタカタ様?」

 無邪気に近づけられる唇に噛みついてしまいたい。柔らかそうなその体を抱き、締めつけてしまいたい。
 男の性か、脳内は淫らなホタルの姿ばかり。師匠にしろとオレを慕う女は、純一無雑な瞳でオレを見つめる。

「ホタル」

 名前を呼び、触れた頬はどうなってしまうのか。体がホタルを求め、オレはそれを抑えられない。白いホタルが汚れていくのは、あまりにも美しすぎて。