あなた色の落書き帳
言葉はいつも、不明瞭で不明確で。どれだけたくさんの言葉を並べたところで、伝えたいことの1割も伝わらない。「ウタカタ様」
好き、好き、大好き。そんな言葉じゃ足りない。もっともっと、純粋で、狂っていて、切ないこの気持ち。
名前を呼んで、抱きしめて。どんな言葉を使えば、この気持ちが伝わるの?
「好き」 言い飽きた言葉
「ありがとう」 そんなありきたりな言葉じゃ
「ウタカタ様」 伝わらない、伝えきれない
無力な言葉の画用紙に、声と表情の彩りを添えて。
どんな色づかいにすれば、ウタカタ様に全部伝わるんだろう。赤、青、白、黒。どんな絵の具を使っても表せなくて、気づけば正反対の暗い色。溢れた水色が滲んで、もっと悲しい絵画になって。
「ウタカタ様」
思っていることの1割でもいいから、ウタカタ様に伝えたい。声は震えて、表情は涙色。優しく微笑んだウタカタ様の色が加わって、たった一滴。なのに私の暗い画用紙は、明るい彩りに変わって。
「好きです。大好きなんです。言葉じゃ足りないくらい、感謝していて。……ウタカタ様、ウタカタ様、ウタカタ、様」
もどかしい。1割でも、ウタカタ様に伝わっているのか、それさえもわからない。ただ、ウタカタ様は私を抱きしめてくれて、頭を撫でてくれて。どんなに並べた言葉よりも、それがとても嬉しくて。
「わかってるよ、ホタル」
「ウタカタ様」
「ちゃんと伝わってる、ホタルの全部。オレが好きで好きでしょうがないって顔、してるじゃねーか」
ゆっくり顔が近づいてきて、ウタカタ様の桃色が私の唇に重なった。そのまま深呼吸して、よく覚えた感触に酔いしれる。ウタカタ様、大好き、です。
「大好き、なんです」
「知ってる」
「好きで、好きで、……やっぱり大好きで」
「全部伝わってる」
私が「好き」って言う度に、言葉の画用紙に桃色が増えていって。
ねぇきっと。1人では描けない絵だって、ウタカタ様と2人ならたくさん描ける気がするよ。私が持っていない色、ウタカタ様はたくさん持っているから。
2人の色が重なって、どんな物にも負けない綺麗な絵が描けたら、そのときはまた、ウタカタ様に全部伝わればいいと思う。言葉じゃ足りない、私の「大好き」