ゆっくりと目を開くのと同時に、柔らかな感触を唇から離す。心地好い温もりがなくなったそこは、まだ足りないというように微かに疼いた。ほどよい切なさを感じながら、明るくなった視界にホタルを映す。

「まだ慣れないのか」

 爪先立ちをしながら目を固く閉じ震える様は、喰われる寸前の草食動物のようにも思える。ただその頬は薄紅色に染まり、開いた瞳は熱に浮かされていた。

「ただの接吻だろう。緊張しすぎだ」
「だって……ウタカタ様のお顔が、あんなに近くにあるんですよ?」

 今までは何の気無しに顔を近づけてきたくせに、よくそんな台詞が言えるな。と、口には出さずにホタルに呆れる。
 照れ屋なのか、初なのか。どちらかわからないが、その赤く染まった顔にそそられてしまうのだからどうしようもない。離れていた顔を近づけ、ホタルの顎を掴んで無理矢理上げさせる。

「うたかっ……!」

 ホタルの声ごと唇を塞ぐと、苦しそうな吐息が漏れた。閉じきらない瞼からホタルの顔がぼやけて脳裏に伝わる。

「く……るしいです!」
「悪い。止まらなくなった」
「止まらなくなったじゃないですよ。死ぬかと思ったんですから!」
「俺がホタルを殺すわけがないだろう」

 涙目でオレを睨むホタルを抱きしめ、親指でそっと唇をなぞる。未だ接吻のみで我慢しているんだ。多少の荒さは許してくれないと堪えられない。