見つめあい合戦

 目を開いて、ウタカタ様をじっと見つめた。瞳がぴったり合って、吸い込まれそうになる。

「……いい加減、諦めたらどうだ」
「絶対嫌です」

 ウタカタ様から目を反らさずにいたら、弟子にしてくれる。この勝負は絶対に負けられない。頭の中がウタカタ様だらけになってクラクラするけど、でも目を反らしちゃだめ。

「根性だけはあるよな、お前」
「それが私の長所です」

 ウタカタ様って、意外と睫毛が長いんだな。瞳の色、黒じゃなくて焦げ茶色なんだ。今まで知らなかったウタカタ様が見れて、なんだか嬉しい。ウタカタ様の瞳に小さく私が映っていて、真っ直ぐにこちらを見つめていた。

「……まだ諦めないのか」
「どんなに言ったって、絶対諦めません」
「……はぁ…………」

 呆れたウタカタ様の目が細まって、私の姿が小さくなる。じっと見つめていたらウタカタ様が私から目を離さずシャボン玉を吹いて、それが私とウタカタ様の間で割れた。

「きゃ!?」

 びっくりして目を瞑り、そこで慌てて顔をあげる。視線の先には相変わらず私を見つめるウタカタ様。

「残念だったな、ホタル」
「卑怯ですよ!こんなの」
「オレは目を反らさなかったぞ」
「っ~!」


(ウタカタ様、もう1回戦です!)(無理だ。理性がもたねぇ)