砂糖水融解

 顔の横に両手をつかれて、甘い香りの吐息が頬にかかった。その温かさに体を震わせれば、ウタカタ様が喉を震わせて笑った。

「ずいぶん余裕のない顔してるな」
「ウタカタ様」
「立ってんのも辛そうじゃねーか」

 楽しそうな笑みを浮かべながら、ウタカタ様の手が腰の辺りを撫でる。それに反応して声をあげる私に、ウタカタ様はまた喉を震わす。

「ウタカタ様の、えっち」
「男の性だ。本当はもっとホタルに触れたくてたまらない」

 ぐっと顔を近づけて、固く閉じられた私の唇をペロッと舐める。堪えられなくなってずるずると壁づたいに座り込めば、覆い被さるように私を見下ろすウタカタ様が、意地悪気に微笑んだ。

「なんだ、もう降参か?」
「や……」
「これでも手加減しているんだ。もっとホタルを感じさせろよ」

 髪に、耳に、唇に。次々に触れるウタカタ様の唇に、体の力がどんどん抜けていく。唯一の抵抗に伸ばした右手も、すぐにウタカタ様に取られ、熱い口付けの餌食になる。

「もう、やめてください……」
「どうしてだ」
「恥ずかしくて……体が……」
「熱くなってとろけそう、か?」
「………はい……」
「はっ。……ホタル、それ、墓穴だぜ?」

 抱き寄せられてウタカタ様との距離が縮まる。甘い吐息を飲み込んで、ウタカタ様の着物を掴んだ。離れたくても、ウタカタ様が離してくれない。頭が、おかしくなりそう。

「ウタカタ様のいじわる……」
「ホタルが誘うからだ」
「誘ってなんか……」
「そんな潤んだ目ぇしてか?」
「…………」
「まだまだ序の口だ。ホタル、今夜はオレも、とろけさせろよ」