シュガー・シュガー
片腕でホタルを拘束し、片手は髪を解くように撫でる。自分の胸の前にある腕を掴み、ホタルは楽しそうに笑った。穏やかな時間。ぐっと体にかかったホタルの重みが愛しい。「ホタル」
「なんですか?」
「愛してる」
抱きしめながら囁いてみれば、ホタルは目を丸くしてこちらを向いた。呆気にとられた表情に、何かおかしなことを言ったのかと戸惑う。が、オレは変なことは言っていない。ただ、ホタルに気持ちを伝えただけだ。
「どうした?」
「ウタカタ様が、愛してるなんて言うから」
「何かおかしいか」
「……いいえ、嬉しいです。私も愛してる」
腕の中で体勢を変え、ホタルの唇がオレに触れた。目を閉じたホタルの顔がぼやけ、唇の感触だけが明確に脳に伝わる。やわらかい温度に目を閉じ、ホタルを感じるように意識を集中する。しばらくして距離が離れると、ホタルが破顔しながら抱きついてきた。
「このまま溶けちゃいたいですね」
「それは誘ってるのか?」
「……少しだけ」
上目遣いにそう言ったホタルを押し倒し、首筋に口付ける。くすぐったそうに身をよじりながら、背中に手を回される。ぐっと顔を近づければ、誘うように体を撫でられた。いつもと違うホタルに驚きながら、何度も口付ける。
「欲求不満か?普段より積極的だな」
「ひどいです、ウタカタ様」
「まだ外は明るいぞ」
「ウタカタ様だって、その気だったじゃないですか」
頬を染めて顔を逸らすホタルに、また愛しさを感じた。首筋に顔を埋めれば、甘い香りが鼻孔に広がる。重なった手を、そっと握りしめた。
「愛してる、ホタル」
「ウタカタ様こそ、どうしたんですか?」
「どうもしない。ただ気持ちを伝えただけだ」
言いながら深く唇を重ね、もう1度愛してると囁く。潤んだ視線が、オレを捕らえた。
「そんなに言われたら、恥ずかしいです」
頬にかかった熱い吐息に誘われ、指先がホタルの肌をゆっくりなぞる。ふっくらとした口唇を、そのまま喰らいつくしてしまいたい。
「ウタカタさま」
「ホタル」
額を合わせ名を呼び合えば開始の合図。とろけるような時間の中、「愛してる」と呟いた。