そりゃないよ、マイハニー!!

 部屋中に酒の匂いが漂う。ここに立っているだけで酔いそうだ。変わり果てた部屋の姿に呆然とする。

「あ、ウタカタ様ー!」

 立ち尽くすオレに、酒の匂いの主が抱きついた。猫のように頬擦りをしたあと、トロンとした目で笑いかける。

「お帰りなさーいっ」
「……ホタル、この酒の匂いはなんだ」
「んー?お酒ですかぁ?」

 どう見ても酔っ払っているホタル。会話が成り立たなくて埒があかない。

「はぁ……。もういい、とりあえず来い」

 歩くのもままならないホタルを抱き上げ、一先ずソファーの上へ下ろした。近くのテーブルには、数個の缶ビール。

「これを飲んだのか」
「はい、飲みましたぁ」
「……お前未成年だろ」
「え?」

 もしかしてこいつ、これが酒だと気づかずに飲んだのか?ありえない阿呆ぶりに呆れていると、徐にホタルが服を脱ぎ出した。

「なっ!ホタル、何やってる!?」
「だって……なんだか暑くて……」
「だからって服を全部脱ぐな!」

 動きを止めないホタルを無理矢理押さえつける。それでもやめないホタルは、あろうことかオレを押し倒した。

「な゛っ……」
「ウタカタ様……」

 強い酒の匂いと、艶めいたホタルの表情に理性が壊れそうになる。落ち着け、落ち着くんだ、オレ。

「……ホタル、そこをどけ」
「嫌です」

 オレの必死の願いを、ホタルは一言で切り捨てた。同時に近づく体。

「お、おい……」

 胸元に柔らかい感触が押し付けられる。ホタルを引き剥がそうにも、下手に動けば唇が触れてしまう。それほどに、近い。

「ウタカタ様……、私……」

 目の前にあるホタルの唇から甘い声が漏れた。心臓が高鳴る。不味い、理性が消えてしまいそうだ。

「私……」
「……ホタル……」
「私……すごく、」
「…………っ……」
「……すごく、……眠い、です」
「は?」

 言い終わると同時に、ホタルはオレの上で寝てしまった。残されたのは、行き場のない両手。

「おいおい……これはないだろ」

 なんて生殺し。少し期待してしまった自分が恥ずかしい。このまま襲ってしまおうかと思ったが、ホタルの幸せそうな寝息がそれを消し去った。


(あれ?ウタカタ様、この空き缶はなんですか?)(お前……覚えてろよ……)