この世界で2人きりになれたら、

 ふわふわと風にのってシャボンは舞う。見慣れた空からの景色も、ホタルにとっては珍しいものらしい。もう何度も浮かんでいるというのに、相変わらず外を見つめながら楽しそうにしている。

「そんなに面白いのか?」
「はい!だっていつもいる地上が、空から見たらこんな形をしているんですよ?楽しいじゃないですか」

 振り返ってそう言うと、ホタルはまた下を眺める。ホタルの思考はわからないが、こうやって楽しんでいるこいつを見るのも悪くない。

「ホタルが楽しいなら、それでいいかもな」
「ウタカタ様が一緒だから、もっと楽しいです」
「……お前なぁ」

 その素直過ぎる発言はどうにかならないのか。1人だけ照れているのも癪なので、強引にホタルに上を向かせ、口付けを落としてやった。

「ウタカタ様?」
「外じゃなくてオレを見てろよ」
「景色にやきもちですか?」
「うるせぇ」

 楽しそうに笑うホタルが気にくわない。だから今度は、もっと激しいのをお見舞いしてやろう。


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