「ウタカタ師匠」

 噛みしめるように呟いて、自然と緩んでしまう頬を両手で押さえる。
 今日から私は、ウタカタ様と師弟になった。嬉しくて嬉しくて、何度も呟く。ウタカタ師匠、ウタカタ師匠。

「なんだ、そんなに人の名前を何回も呼んで」
「う、ウタカタ様!!」

 背後から声をかけられて、思わず口を押さえる。今の、聞かれていたのかしら。

「何かオレに用事か?」
「い、いえ……。ちょっと、練習をしていたんです。ウタカタ様を、師匠と呼ぶ練習を」

 しどろもどもに説明すれば、ウタカタ様は目を丸くしてこちらを見た。じっと見つめられて、火照っていた顔が余計に熱をもっていく。

「練習って……、呼ぶなと言っていた頃は何度も呼んでいたくせに」
「それは!……それはまだ、あまり意識していなかったからで……」
「意識?」
「ウタカタ様が師匠だって、改めて考えたら、なんだか緊張してしまって……。それに、嬉しいんです。ウタカタ様とこうして、師弟になれたことが」
「……そうか」

 優しく微笑んだウタカタ様が、隣に立って手を握ってくれた。繋いだ手の平から、熱が伝わってくる。

「喜んでばかりじゃいられないぞ。オレの修行は厳しいからな」
「どんな辛い旅でも、ついていきますよ」

 これはまだ、夢の始まり。繋いだ手を握りかえして、私たちの旅が、始まっていく。