イライラする。どうしてかと言われれば、多分目の前の光景に対してだ。

「サイさんの絵って本当に素敵です!」
「そうかな?でも、そんなに褒めてもらえると嬉しいよ」

 目の前で繰り広げられる会話。話の内容はいい。ただ、距離が問題だ。

「ホタルさんも描いてみる?」
「えっ……。でも私、絵なんか描いたことないし……」
「大丈夫だよ。ほら、こうして筆を持って――」

 近い。近すぎる。
 ホタルの手を覆うように重ねた手。髪が触れそうなほど近い顔。そして楽しそうな、ホタルの表情。

「ガキがなにしてやがる」
「きゃっ!」

 堪えられなくなり、ホタルの首根っこを掴み、サイから離す。きょとんとした顔に、またイライラが増大した。

「ウ、ウタカタ様?」
「行くぞ」

 どうしてイライラしていたのかわからない。ただ、こいつがサイと――他の男と話しているのが気に喰わなかった。
 嫉妬?まさか。こいつはただの居候先の娘だ。そんなこと、あるはずがない。