人混みの中、離れないようにと言い訳をして、ウタカタ様の袖を掴む。ただそれだけで、周りに誰もいないと感じるくらいに緊張した。空を彩るはずの花火にも、集中できない。

「久しぶりだな。花火なんて見たのは」

 そう言って微笑むウタカタ様の後ろに、大輪の花が重なり輝く。夜空に溶けて滲んでいくそれに合わせて、唇を動かした。

「帰りに夜店で何か買ってくか?」
「……いいです。私、こうして花火が見られただけで幸せですから」

 呟いた2文字の言葉は秘密のままでいい。だから、1秒でも長く花火を咲かせて。あなたに触れさせていて。