両腕の中の温もりが消えたのを感じ、目を開けて辺りを見回す。すっかり広くなってしまった膝の上。どうやら元の時代に戻れたらしい。

「ウタカタ様、こんなところにいたんですか」

 息をついたのと同時に名前を呼ばれ、ゆっくりと振り返る。見慣れた姿をするホタルは、両手に買い物袋をぶら下げて、朗らかな笑みを浮かべながら襖の近くに立っていた。

「おかえり、ホタル」

 手招きに答えて傍に寄るホタルを、さっきと同じように抱きしめた。戸惑うような視線も、慌てたような声も上げられない。あの時からどのくらい経ったのだろう。優しい温もりは、今も変わらない。

「今頃どうしてるかな」
「――?何がですか?」

 遠い昔を想い呟けば、耳元で不思議そうなホタルの声がする。その声にごまかすように笑いながら、叶わなかった唇へ触れた。きゅっとしがみつくホタルを、失わないように抱きしめる。

「――私、ウタカタ様が好きです」
「なんだ、急に」
「なんだか伝えなきゃいけないような気がして。私はウタカタ様から離れる気はないし、ウタカタ様は今も昔も、ずっと素敵な人だってことを」

 そう言って頬擦りをするホタルに、いつかの記憶が重なった。まったく、こいつにはいつも敵わない。あの気持ちが恋になることを、ホタルはずっと前から、知っていたんだ。