せかいじゅうのキラキラを拾って

 世界中の恋人たちが浮かれる夜、盛り上がる地上を眺め、ホタルははしゃいでいた。均一に並んだ光の先に見えるクリスマスツリー。そして微かに耳に伝わる賛美歌。

「女は好きだよな。こういうクリスマスとかイルミネーションとか」
「だって、なんだかわくわくしません?いつもと違う雰囲気の街に、楽しげな音楽。素敵じゃないですか」

 賛美歌に合わせて鼻歌まで歌いだすホタルと反対に、ウタカタはつまらなそうに欠伸をした。聞こえるホタルの賛美歌を子守唄に、一眠りしようと目を閉じる。

「あ!だめですよウタカタ様!お昼寝なんかしちゃ」
「なんでだ。空からイルミネーションを見たいって言ったのはお前だろう?その願いは叶えた」
「ひとりで見ても意味がないんです!ちゃんと起きててください!」

 ホタルに不満を言われて、ウタカタは不機嫌そうに目を開けた。ホタルはそんなウタカタの腕に抱きつき、甘えるように頬擦りをする。

「ウタカタ様、今夜はクリスマス。聖なる夜なんですから。もう少しロマンチックにいきましょうよ」
「性なる夜の間違いだろう」
「え?」

 きょとんとするホタルの顎を掴み、ウタカタは少し深めに口付けた。柔らかい感触を堪能したあと、満足げに顔を離して口端を上げる。

「イルミネーションなんて興味ないんだ」
「そんなぁ」
「そんなものより、ホタルを見てたほうが面白い」

 下に広がる光を奪うように、ウタカタはホタルを自分のほうに寄せた。賛美歌の音がだんだんと遠くなり、2人は空高くへと上がっていく。

「そろそろ砦に戻るぞ。イルミネーションには満足したか?」
「はいっ。ウタカタ様、今夜は素敵なプレゼントをありがとうございました」
「ふん……」
「砦に帰ったら、たくさんご馳走がありますからね。お酒も今日は、奮発して高いの買っちゃいました」
「その酒は、ホタルが注いでくれるんだろうな?」
「当たり前じゃないですか」

 ホタルの返事を聞いて、ウタカタは小さく微笑む。たまにはこんな夜もいいかもしれない。聖なる夜。異国の神の誕生日なんて祝う気はないが、ホタルと共に楽しんでみるか。
 ホタルのやわらかい髪を撫でながら、ウタカタは空を見上げた。いつのまにか聞こえなくなっていた賛美歌を口ずさむと、ホタルが穏やかに微笑んだ。


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