食事を終え、読み終わった新聞を畳んで台所へと足を運ぶ。水音とともに聞こえる食器の音と、見慣れた後ろ姿が目に入る。鼻歌まじりに事を片していく姿に、不意に懐かしい気持ちが湧き上がってきた。その感情をごまかすように咳払いをしたあと、1歩ホタルに近づく。
「どうかしましたか?ウタカタ様」
「いや、……何か手伝うことはあるか?」
「あと少しだけですから、大丈夫です」
首を捻り微笑むホタルに、ごまかしていた気持ちは大きく膨らんでいく。らしくないと思いつつも、ホタルを後ろから抱きしめ、後頭部に顔をうずめた。甘い香りが、鼻孔をくすぐる。
「ウタカタ様?」
「…………」
「ふふ、なんだかめずらしい」
「ん?」
「ウタカタ様がこうやって甘えてくるの、めずらしいし、なんだか久しぶりです」
手を拭きこちらを向いたホタルが、子どもをあやすようにオレの頭を撫でた。その動作に顔をしかめつつも、まだ冷えている手のひらを掴み、唇を寄せる。
「甘えてなんかない」
「そうですか」
「……なんだ、その顔は」
「いいえ」
冷たい指先が、ゆっくりと唇をなぞる。もう何年も一緒に暮らしているが、いつでもこの表情には勝てる気がしない。無邪気の中に見える女の表情。誘われるがままに口付けを交わし、腰に手を回す。
「シンコンさんみたいですね。台所でこんなこと」
「たまにはいいだろ」
「そうですね。……ウタカタ様」
「なんだ?」
「もう1回、してください」
首に手を回すホタルと、至近距離で見つめ合う。何度繰り返したか覚えていないほど、重ねた唇。飽きることのない感触に、ホタルを抱く腕の力を、少し強めた。
「どうかしましたか?ウタカタ様」
「いや、……何か手伝うことはあるか?」
「あと少しだけですから、大丈夫です」
首を捻り微笑むホタルに、ごまかしていた気持ちは大きく膨らんでいく。らしくないと思いつつも、ホタルを後ろから抱きしめ、後頭部に顔をうずめた。甘い香りが、鼻孔をくすぐる。
「ウタカタ様?」
「…………」
「ふふ、なんだかめずらしい」
「ん?」
「ウタカタ様がこうやって甘えてくるの、めずらしいし、なんだか久しぶりです」
手を拭きこちらを向いたホタルが、子どもをあやすようにオレの頭を撫でた。その動作に顔をしかめつつも、まだ冷えている手のひらを掴み、唇を寄せる。
「甘えてなんかない」
「そうですか」
「……なんだ、その顔は」
「いいえ」
冷たい指先が、ゆっくりと唇をなぞる。もう何年も一緒に暮らしているが、いつでもこの表情には勝てる気がしない。無邪気の中に見える女の表情。誘われるがままに口付けを交わし、腰に手を回す。
「シンコンさんみたいですね。台所でこんなこと」
「たまにはいいだろ」
「そうですね。……ウタカタ様」
「なんだ?」
「もう1回、してください」
首に手を回すホタルと、至近距離で見つめ合う。何度繰り返したか覚えていないほど、重ねた唇。飽きることのない感触に、ホタルを抱く腕の力を、少し強めた。