太陽がいつか流れ星になる日

 安らかに寝息をたてるホタルをそっと撫で、部屋から見える月を眺めた。暗い夜空にぽっかりと浮かぶ満月。周りの星の光を奪い、その存在を主張する。

「ホタル、知ってるか?月が輝いているのは、自分の力じゃないんだ。太陽の光を受けて、初めて月は輝く……そういう意味では、月は小さな星たちよりも、ずっと弱い存在なんだよな」

 大きな満月を目に焼きつけて、そのままホタルを見た。幸せそうな寝顔。これから訪れる別れなど、ホタルは知らず、ただ眠っている。

「ホタル、お前はオレを見つけてくれた。照らしてくれた。オレが月なら、ホタルは太陽だろう。暖かくて眩しくて、手に入れるのが恐ろしくなるほど、いつも優しいんだ」

 ホタルの左手を握りしめ、唇を寄せた。愛しい愛しいホタル。この温もりを、オレは失わなければならないのか。握ったこの手を、離さなければならないのか。

「ホタル、オレはお前が愛しくてたまらない。恋だの愛だの、そんな言葉じゃ足りないんだ。永遠にオレのものにしたい。……でも、」

 日に日に薄れていく腹の封印。この身が六尾に侵食されるのは、一体いつになるのだろうか。せっかく取り戻したというのに、幸せはこんなに儚いものなのか。六尾がオレの中にいる限り、平穏は永遠に望めない。暁に追われ、いつ弾けるかわからない爆弾を抱えながら、いつまでホタルと旅を続けられるんだろう。

「……なぁ、ホタル。たとえすぐに別れがきたとしても、オレたちは永遠に繋がっている。それを忘れないでくれ」

 唇を重ね、淡く視界に映るホタルを見つめながらゆっくり目を閉じた。太陽が欠けた月は、2度と光れない。月が欠けた太陽は、どうなってしまうんだろう。照らし輝く存在がなくなっても、太陽はずっと輝き続けるのだろうか。


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