天地創造

 真夜中、耳元に届く荒い息遣いに目を覚ます。暗い視界に、ぼんやりと見えるウタカタ様。ああ、またか。そんなことを思いながら、首筋を這う舌を受け入れる。

「ホタル……ホタル……」

 性急に服を脱がし、譫言のように名前を呼ぶ。ウタカタ様にとって私の名前は、自分の存在を確かめる呪文。名前を呼んで、返事をして。自分がそこに存在していることを、必死に確かめている。

「ウタカタ様」
「ホタル、ホタル」
「私はここに居ますよ、ウタカタ様」

 覆いかぶさる身体を抱きしめて、ウタカタ様の耳にキスをした。私をまさぐる手を握りしめて、ウタカタ様に私の存在を伝える。大丈夫、あなたはひとりじゃない。

「……すまない……ホタル……」

 全てを私に吐き出して、そこでウタカタ様はいつも我に返る。俯くウタカタ様を抱き寄せて、額にそっと口付ける。孤独にとりつかれた、可哀相な人。この世界で1番、愛が欲しくて怖くてたまらない人。

「ウタカタ様、私はここに居ますよ。いつも、ずっとここに」
「ホタル、」
「だから、怖がらないでください。ウタカタ様はひとりじゃない。私がいます。私とウタカタ様は、ずっと繋がっている」

 世界がウタカタを拒否するのなら、私は世界を拒否しよう。排除された存在のまま、生きていくわけにはいかない。私がウタカタ様の世界に、ウタカタ様が私の世界に。恐れるものなんて何もない。この世界に孤独は存在しない。ウタカタ様と私、手を取り合って繋がって、新しい世界を。