ロンリーソリタリー

「どうして、ウタカタ様が……」

 涙は見せたくなかったのに。もうウタカタ様を困らせたくなかったのに。赤くなる顔を両手で覆って、せめてもと俯いて涙が見えないようにした。泣き止まない私をウタカタ様は撫でてくれて、余計に涙が溢れてくる。

「ありがとう、ホタル」
「どうして、笑ってるんですか」
「嬉しいんだよ。今まで自分のために泣いてくれる人なんていなかったから」

 穏やかに微笑むウタカタ様に抱き着いて、また大声で泣いた。どうしてウタカタ様はそんなに優しいの?辛いのはウタカタ様の方なのに。

「ウタカタさまっ……」
「ホタル」
「ごめんなさい、今まで気づいてあげられなくて……」
「いいんだよ。ホタルが今傍にいてくれるだけで、オレは幸せなんだ」

 ウタカタ様も私を抱きしめて、2人の体が密着する。いつも通り温かいウタカタ様の体。けれどとても冷たい闇を抱えている体。

「本当に良かったと思うよ。ホタルが禁術から解放されて。こんな思いをするのは、オレだけで十分だ」
「っ、嫌です。ウタカタ様も、早くそんなもの抜き出して、」
「無理なんだよ。六尾コイツがオレの中からいなくなるときは、オレが死ぬ時だ」

 言葉を失った私を、ウタカタ様はまた強く抱きしめる。こんなにこんなに好きなのに、救ってあげられない。私はウタカタ様を救えない。

「ホタル、頼みがあるんだ。これからも、ずっと傍にいてくれないか?ホタルがいれば、また、……信じられる気がするんだ」
「そんな、当たり前です。私がウタカタ様から離れるなんて、ありえないです」
「……ありがとう。ホタルは優しいな」

 違います。優しいのは、ウタカタ様のほう。その気持ちを伝える前に、唇が重なる。守ってあげたい。救ってあげたい。それができないなら、せめて傍にいさせて。ウタカタ様の傍にいさせて。

「ホタル」
「ウタカタ、様……」
「……ずっと一緒に、いたかったな……」

 そう遠くない未来に訪れる、永遠の別れ。私は堪えられるんだろうか。ウタカタ様のいない世界で、生きていけるんだろうか。

「愛してる、ホタル」
「……私も、愛してます……」

 そっと流れる涙を、迫りくる別れを見ないように、私は目を閉じてウタカタ様に口付けた。


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